設計室長 石山園美
二世帯住宅は、別々のご家族が一緒に住むことになるので、単世帯の住宅よりも考慮すべきことが増えます。完全分離型にするのか、同居型にするか、一部共用型にするのか。完全分離型でないなら、なにを共用し、なにを別々にするのか。一般的に奥様のご両親との同居であれば、大きな問題はなくスムーズにいくケースが多いです。
奥様同士が実の親子で、ざっくばらんに相談ができ、親世帯のお父様は奥様と実の娘が進めるのであれば文句はないし、子世帯のご主人もお仕事ができるスペースさえ確保できればあとはおまかせ、となるケースが多いようです。
しかし、ご主人のご両親との二世帯住宅となるとそうはいきません。それまでそれぞれのご家庭で家事をなさってきたのですから、そんなに簡単にいくわけもないのです。
二世帯住宅のプランニングは、ご家族そろってお打ち合わせすることが多いのですが、それだとお互いに遠慮して本音を言えないケースが少なくありません。『その場ではOKと言ってしまったけれど、心の奥底ではそれは避けたいと思っていた。』こういうことがあると、家族みんなが満足のいく家づくりにはなりません。ですので、私はご家族皆さんでお打ち合わせをする場を持つのはもちろんですが、それぞれ個別にお話しを聞く機会も持つようにしています。すると、気兼ねなくお話しが聞けて、双方のご要望にかなうアイディアが見つかり、うまくいく場合が多いのです。
どうせ建てるなら、住み継がれる家に
『二世帯住宅、今はいいけれど、両親もいつかは・・・。そうなったら、広い家を持て余してしまうのではないだろうか。』こういうご心配、あると思います。このご心配を解消する答えはシンプルで、長く暮らせる家を建てることにつきます。住宅の価値がキープできれば、売却を検討することもできるし、完全分離型二世帯住宅であれば、少し手を入れて賃貸併用住宅として、家賃収入を狙うことも可能です。子世帯のご子息、ご息女が大きくなって、また二世帯として暮らす事だって可能です。どう生かすにせよ、大事なのは長く暮らせる家を建てること。石山工業所が建てる家は、全棟長期優良住宅仕様です。長期優良住宅とは、それまで30年ほどだった日本の住宅寿命を延ばすために、住生活基本法のもと、『200年住宅ビジョン』に沿って制度化されたものです。さすがに200年は言い過ぎですが、きちんとメンテナンスさえすれば、相当期間、住み継ぐことができる家です。
二世帯住宅は相続税対策にもなります
土地の名義人であられる、親世帯のご主人さまがお亡くなりになり、相続が発生した際、二世帯住宅を建てていると、その土地の相続税評価額が8割引になります。8割になるのではなく、8割引になるのです。例えば、二世帯住宅を建てなければ5000万円の評価があったとすると、二世帯住宅を建てることで1000万円まで下がることになります。他に2000万円の現預金を相続するとしても、おひとりで相続する場合の基礎控除額は3600万円ですから、その範囲内となり相続税はかかりません。
二世帯住宅を建てずにそのまま相続税がかかったとすると、5000万円+現預金2000万円となり、基礎控除額3600万円を引いて課税対象額は3400万円。3400万円の課税対象額に対する相続税率は20%、控除額は200万円ですから、3400万円×0.2-200万円=480万円の相続税がかかることになります。
しかし、「相続税対策になるから」と安易に二世帯住宅を建て、暮らしが合わず結局別居することになった、という残念な結果を招いた事例もあります。二世帯住宅は、そこに住む方々がしあわせに暮らせるよう、しっかり準備をして納得の上、進めるのが成功の秘訣です。