省エネ住宅が義務化されます
先月13日、国会で建築物省エネ法の改正案が国会で可決されました。
その4日後に、その内容が公布されています。
可決したときにはニュースで取り上げられましたが、それ以上に大きなニュースが複数発生していますので、それ以降ほとんど話題にものぼりません。
でも、これから家を建てる方にとってはとっても大事なことですので、この場で触れておきたいと思います。
結論から言いますと、3年後の2025年から、国が定める省エネルギー基準をクリアしていない住宅は建築できなくなります。
その基準とは大きく2つあります。
1つは外皮性能基準、
もう1つは、一次エネルギー消費量基準です。
1つづつ見ていきましょう。
まず、外皮性能基準の外皮とは、家の外側を包む性能の基準のこと。
この外皮基準にも2つの観点があり、1つは外壁、屋根、天井、開口部などの断熱性の基準をUA(ユーエー)値という物差しで測るもの。
もう1つは、夏場の遮熱性能の基準、ηAC(イータエーシー)値という物差しで測るものがあります。
外気の熱を伝えにくくするということであれば、断熱性だけを考慮すればよさそうですが、いくら断熱性の高い窓を設置しても、直射日光がその窓にあたると光と熱が室内に入り、ものすごく暑くなりますよね。
そういった日差しを遮る=遮熱する性能も考慮する必要があるのです。
この基準、寒い北海道と常夏の沖縄で基準が同じはずもなく、地域によって細かく区分されています。
ちなみに埼玉県の基準はUA値が0.87、ηAC値は2.8で、いずれもこの数値を下回ることが求められます。
この基準をクリアするように、設計段階で使用する部材やプランなどを考慮します。
その結果、LIXILさんにお願いした結果がこちら。
現在建築中のS様邸の報告書の一部抜粋です。
UA値0.87に対し、S様邸の性能は0.48、ηAC値は1.2%でクリアしています。
ちなみに、UA値0.87という基準は、欧米の基準に比べて非常に低く、本来であればもっと断熱性を高めるべきだ!という声も多く聞かれます。
どのレベルが最適なのかは議論がありますが、その段階を図にするとこのようになります。
下から2番目が今の省エネ基準です。
S様のお宅のUA値は0.48ですから、上から2つ目のZEHプラスをクリアしているレベルです。
ちなみに、現在の予定では、2030年に基準が厳しくなり、1つ上のZEH基準=UA値0.6をクリアすることが義務付けられる予定です。
さて、それでは建築物省エネ法の改正で義務付けられるもう一つの基準、一次エネルギー消費量をご紹介しましょう。
これは、その住宅で採用される冷暖房、給湯、照明、換気などの住宅設備機器について、基準値よりも少ないエネルギーで生活できるようにしてくださいね、という基準です。
要は、使用する設備機器に、省エネなものを使うことが求められるというわけです。
そのほかの電化製品は、個別に計算するのは現実的ではないため、床面積の広さによって想定されます。
また、冷暖房は、その機器の省エネ性能だけでは測れず、外皮性能によるところが大きいので、まずは外皮性能を割り出してから計算します。
前出のS様邸の一次エネルギー消費量を算出した結果がこちら。
一次エネルギー消費量基準が64.3に対し、36.3で適合しているという結果が出ました。
3年後、この基準をクリアしていないと家が建てられなくなります。
逆に言えば、2024年までは無視しても建てられるということです。
でも、省エネ基準をクリアした家が当たり前になったときに、ご自宅はクリアしていないというのはあまりお勧めできません。
夏も冬も快適には過ごせないはずですし、何かの理由でその家を手放すことになってしまった場合、省エネ基準をクリアした家とそうでない家では評価が変わります。
例えば、住宅ローン減税が使えない家として売り出さなければならなくなるとすると、とても売りにくくになります。
もしこれから家を建てようと思っていて、この点を見落としている方がいるとすれば、検討項目の1つに追加されることをお勧めいたします。
「3年後から省エネ基準をクリアしていないと家が建てられなくなる。」
当社ではこの事実を重く見て、本年より、全棟省エネ基準判定を行い、適合した家を建築してまいります。