耐震改修工事@岩槻区
以前よりお世話になっているT様から、耐震改修工事のご依頼をいただきました。
工事前のお住まいはこちら。
家を建てる時には、建築基準法に則った家を建てる必要があります。
建築基準法の中に地震に耐えられる家を建てましょうという基準=耐震基準というものがあり、これまで強い地震があるたびに強化されてきました。
昭和56年6月1日以降に建てられた家は新耐震基準に則って建てられているのですが、それ以前は旧耐震基準によるものなので、非常に危険だと言われています。
行政は、その旧耐震基準で建てられている家については耐震診断を無料で行ったり、耐震工事に補助金を出すことで、早く安全な住まいに改修しましょう、と促しています。
今回のお住まいも築40年ほど。
行政の指導に沿いながら工事を進めて、120万円の補助金をいただき、工事代金の一部に充当します。
住宅の耐震化もそうですが、まず着手したのはブロック塀と大木。
大きな地震が来た時にブロック塀が倒れ、人が下敷きになるという痛ましい事故が起きないように手を打ちます。
ブロック塀の高さを下げる工事を行いますが、まずは大木を伐採します。
ブロック塀は倒壊を防ぐために、6段以上積む場合、裏側に壁を設けて倒壊を防ぐ必要があります。
そこで5段目より上のブロックを解体することになりました。
右手のブロックは劣化がはげしい為、3段目から上を新しいブロック塀にやり替えます。
取付が完了しました。
上部3段分を解体したことで重心が下がり、見た目にも安定したことがわかります。
これなら倒壊する可能性が大幅に低下しますし、倒壊したとしても影響範囲が少なくて済みます。
家屋の工事へ。
まずは足場を設置します。
耐震工事と言いながら、水まわりや窓まわりなどもすべて交換しますが今回は、耐震に絞ってご紹介しましょう。
写真はホールダウンデュオルーツアンカーの取り付けが完了した模様です。
土台に2本のボルトが設置されています。
1本は柱に固定され、もう1本は短いボルトで留められています。
このように2本で基礎と土台、柱をつなぐことで柱が引き抜ける力を分散させています。
阪神大震災の時には、激しい縦揺れにより柱が抜けて家が倒壊し、多くの人命が失われました。
こちらは柱と梁を緊結させるホールダウンハング。
工事は事前に耐震診断を受け、その診断書に則って行われます。
きちんとやったかどうかの証拠になるのがこの写真なのです。
耐震工事では、これまでにご紹介した耐震金具と、壁を強化する方法が用いられます。
これが壁の補強です。
もう一つ、筋交いで柱と柱をナナメにつなぐ方法もありますが、床や天井を壊さなければできないため、大掛かりな工事になってしまいます。
今回採用する「ガーディアンウォール工法」だと、既存の床や天井を壊すことなく進められる上、筋交いによる補強よりも耐力も上がると言われています。
交換したサッシの右手、新しい断熱材が入っている壁がガーディアンウォール工法によって補強される壁です。この段階で下地の工事が終了しました。
このように、柱と柱の間に9㎜のベニヤ板をはめこんで補強します。
和室の場合、長押(なげし)のような装飾によって、柱が細くなり、柱の強度が弱い部分があるのですが、そのような場合には金属製の長押プレートで裏側を支え、柱が折れるのを防ぎます。
構造については、このように耐震金具と壁の補強で細部にわたって耐震化を行いました。
もう一つ大切なのは屋根です。
瓦は重いので、家に負担がかかります。
軽い屋根材に葺き替えます。
瓦が撤去されました。
葺き土と瓦桟と言われる瓦を固定するための下地が出てきました。
瓦と土が屋根の上に載っているわけですから、その重さ、ご想像いただけると思います。
葺き土を撤去して出てきたのが野地板です。
築年数が経過している割にきれいですね。
万が一屋根から雨が染み込んだ時にも野地板に水が染み込まないように、アスファルトルーフィング=防水材料を設置します。
当然ですが、下から重ねて張ることで、染み入る事の無いように施工します。
コロニアル屋根への葺き替え工事が完了しました。
見るからに軽くなったと思います。
これで構造にかかる負担も抑えられます。
ここでもう一度、beforeの写真をご覧いただきましょう。
屋根も重そうだし、ブロック塀も不安定に見えます。
大きな地震が来たらと思うと不安です。
両サイドのブロック塀も低くなり安定した上、敷地内も見通せるようになったので防犯上もよさそうです。
バルコニーが半分になってしまったのが残念ですが、窓だった部分が一部、壁に変わり耐力がアップしたのがわかります。
屋根の重量感もなくなりました。
この写真では見えませんが、何より耐震診断により導き出された、金具と耐震壁によって構造が強化されたので安心して住み続けていただけることと思います。
T様、ありがとうございました。